愛される園舎のつくりかた
社会福祉法人 栄昭福祉会
小迎保育園
長崎県西海市
あたたかな木で
子どもたちを包み込む
海の見える巣箱
長崎県の複雑な地形に囲まれた穏やかな海、大村湾の西側の高台に建つ〈小迎保育園〉。旧園舎から徒歩数分の、元は畑だった土地を取得しての新築です。「この眺めや周囲の環境とつながるプランニングと、手触りのいい木造にはこだわりたかったんです」と谷口剛園長。
海へ向かって傾斜する急勾配の土地を生かして段差のある園庭をつくり、 その中心に平屋建ての園舎が配されました。 イメージしたのは“巣箱”。起伏ある地形で建物を取り囲むような、子どもたちに安心感を与える建物です。ダークな色合いの外壁は、大分県日田産の焼杉材。落ち着きのある優しい表情で子どもたちを迎え入れています。
建物のなかへ入ると、イメージは一転します。玄関を入ると広がる大ホールは、小ぶりな印象の外観からは想像もつかない、天井の高さ約4.5mの大空間。明るいトーンの木に囲まれた、大スパンで柱のない一室空間に、子どもたちのにぎやかな声が響き渡ります。この約半分ほどがランチルーム。もう半分が3・4・5歳児一緒のクラスのための空間。こちらは「まなび」「ごっこあそび」「ブロック」「表現」「制作」などのサインでゾーン分けされており、子どもたちが自分の意志で遊びを選んで活動することができるのです。さらに食事や昼寝も別の場所で行うので、ゾーン教育の実践はより効果的なものになるでしょう。園の教育指針に寄り添った建物なのです。
右手側の海に向かって傾斜する敷地。丘に守られるように園舎を配置し、園庭は傾斜を利用することで起伏と変化を出しました。
園舎は、園庭のむこうに広がる海の側に向けて開かれたつくり。幅の広いウッドデッキが、園庭と園舎を滑らかにつなぎます。
日本で古くから外壁に使われてきた「焼杉」は、杉板を予め炭化させることで耐火・耐久性能を上昇させたもの。光を受けて微妙に変化する表情も美しい。
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