ホンモノを⾒て触って
⾷べて学べる保育園
●KIDS SMILE LABO Nursery(神奈川県)
全国540園の幼児施設設計に携わってきた日比野設計が2021年3月に満を持して作った保育園KIDS SMILE LABO。
園長の松下かおるさん、副園長の森誉さんに、保育園に込めた想いや子どもたちの日常の様子を取材してきました。
【PAGE1】本当にビルの中!?こだわりの園舎をご紹介!
【PAGE2】子どもの「やってみたい」を形に。保育のこだわりは?
【PAGE3】大人の「やってみたい」も形に。今後の目標は?
まずは、ビルの中なのに、緑豊かで段差やアトリエやライブラリーなど、様々な遊びの仕掛けのあるこだわりの園舎をご紹介します。
【PAGE1】
本当にビルの中!?
こだわりの園舎をご紹介!
園舎設計のコンセプトは、「⼩さな森の研究所―ビルの中に作る⼦どものたちの森」。厚木周辺の自然豊かな環境の要素を室内に取り込んでいます。
園長の松下さんに、9つのポイントを紹介していただきました。
1.自然に身体の使い方を学ぶ「山登りステップ」
(松下)あえて段差を園内の随所に設けることで、遊びの中で自然と体を動かすことができる環境となっています。乳児であっても、自分の足をよく見て、時には背面になって、本当にうまく登り降りしています。一番高いところにあるカウンターでランチを食べる子も、お皿やコップを持ちながら、そーっと段差を登り降りしていて、危なっかしいのですが声をかけながら見守るようにしています。園内にある沢山の段差は、開園前は少し不安な部分でしたが、この段差で怪我をした子は今のところいません。子どもたちを信じて見守ること、大人が危ないからと言って危険物を取り除きすぎないことが、子どもの成長にとって大切なことだと改めて感じています。
2.土と緑に触れることのできる「ビルの中の森」
(松下)保育園内の随所に多種多様な植物を植え、季節に応じて変化のある森のような環境が生まれています。バナナの木、コーヒーの木など、実のなる植物も植えられており、子どもたちの学びや遊びにつながっています。当初は、葉っぱを取ってしまう子もいるかと思っていたのですが、水やりや霧吹きなど、子どもたちも積極的にお手伝いをしてくれていて、大切に扱ってくれています。
3.食への興味を刺激する「森のダイニング」
(松下)子どもたちはここで自分で配膳を行います。給食は1つ上のフロアにある、地元の野菜を中心に健康的なデリを作る「2343 FOODLABO」が監修していて、とても美味しいです。器もホンモノにこだわっています。無垢の木材を使用した「KIDS DESIGN LABO」の机と椅子、波佐見焼のお皿や小鉢、ガラスのコップ、平塚の陶芸家の方にオリジナルで作っていただいているお茶碗など、そういったところからも「物を大切にする」ことが学んでもらえたらと思っています。
4.子ども同士の遊びが広がる「秘密の小道」
(松下)ここは子どもたちの世界が広がる遊びの場です。おもちゃのお皿や野菜なども置いてあるので、ごっこ遊びをして遊んでいます。日当たりもよく、ぽかぽかしているので、心地の良い空間です。横には、プランターがあり、子ども達が育てている野菜やハーブが植えられています。先日2343 FOODLABOの農家の方が種まきを教えに来てくれたのですが、子どもたちは毎日芽が成長していく様子をよく観察しています。
5.思いっきり表現を楽しめる「洞穴アトリエ」
(松下)低い黒板の壁で囲まれたアトリエスペースです。子どもたちは集中しながら、床の汚れを気にすることなく、思いっきり表現を楽しむことができます。上からは、アトリエ内を上から覗くことができ、他の活動をしている子もアート活動に興味をもつことができます。お散歩中に見つけた物や色々な廃材をディスプレイして、もっと子どもたちの創造意欲を刺激していける環境に整えていきたいと思っています。
6.探求心が刺激される「探検家ライブラリー」
(松下)アトリエ横の本棚には、水槽や子どもたちがお散歩で捕まえてきた虫を入れた虫かごも置いています。本棚には魚や虫の図鑑も並べられていて、自分で観察したり調べることができます。園にある絵本は、全てSNSで呼びかけて集まった寄付の絵本。ご家庭で大切にされてきた絵本を、またここでまた大切に使わせていただいてます。
7.電車や街の様子を眺める見晴らしライブラリー
(松下)森の頂上、段差の一番上に登れば、電車や街の様子を眺められるライブラリーカウンターがあります。絵本の読み聞かせの場所としてだけでなく、ランチを食べる場所、電車を眺める場所、駅へ向かうお母さんを見送る場所、心を落ち着かせる場所など、時間や状況に応じて色々な使われ方をしています。
8.遊びは無限大!不思議な「鏡の池」
(松下)反射する池をイメージして作られた空間です。中はトイレブースになっていて、鏡のおかげで保育室内にトイレがあっても圧迫感がありません。先日保育園のTシャツデザインをしてくれているグラフィックデザイナーの小熊千佳子さんが来園してくださり、鏡に絵を描いていただきました。子どもたちは、その絵に気づき、真似をして絵を描いて楽しんでいました。色々な特技を持っている方や専門家の方が来てくださって、子ども刺激を受けていると思います。
9.植物由来の100%天然アロマが香る保育室
(松下)天然アロマの機能を生かしたアロマ空間デザインを提供しているアットアロマ株式会社の協力のもと、保育室内に天然アロマのディフューザーを導入しています。樹木やフルーツやハーブなど、森にいるかのような香りで、子どもの五感を刺激します。今後、福井大学西本雅人研究室主導のもと、保育士のストレスや子どもの睡眠にアロマはどう影響するか、という研究も行う予定で、子ども環境研究の拠点としても発信していけたらと思っています。